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ファイナルサードへの進入はゴール期待値を高めるか?

はじめに

リバプールのデータアナリスト、イアン・グラハムの著書『サッカーはデータが10割』によれば、単純なボール保持よりもアタッキングサードでのボール保持に遥かに価値があるという。当初は、この説がJリーグにおいても当てはまるかを検証することを目的として調査を進めていた。

しかし、Jリーグのエリア別ポゼッション率データを機械的に抽出できるプラットフォームが存在しなかったため、代替指標としてFootball Labの「30mライン進入回数」を用い、相手の30mラインへの進入がゴール期待値にどの程度影響するかを調べることにした。

手法

使用したデータは、Football Lab の各クラブページからスクレイピングで取得した、J1リーグ(2019〜2025年)の試合情報である。

各試合においてチームごとのゴール期待値と30mライン進入回数をカウントし、その相関を算出した上で散布図にプロットした。

結果

以下が作成した散布図である。 データは比較的まばらに広がっており、相関係数は約  r = 0.331 となった。

過去の分析でポゼッションと勝率に明確な関係が見られなかったことを踏まえると、単純なポゼッションよりも30mライン進入回数の方が試合展開の把握には有用である可能性はある。 しかし、一定の関連は認められるものの、ゴール期待値を大きく高める決定的な手段であるとは言い難い結果となった。

まとめ

今回の分析から、30mラインへの進入回数とゴール期待値には強い相関は認められなかったことが分かる。

この結果については、相手の30mラインに進入できない場合は得点機会が減る傾向はあるものの、進入できたとしても必ずしもチャンス創出に直結するわけではない、という仮説が考えられる。ただし、これはあくまで仮説に過ぎず、さらなる検証が必要である。

Football Labの用語説明によれば、この指標は

相手ゴールから30mまでのエリアに進入をした回数

をカウントするものであり、30m以内でのポゼッションが長くなると進入回数自体が減少する可能性もある。そのため、必ずしも得点機会の多寡を正確に反映しているわけではないのかもしれない。 それでも、個人的にはやや意外な結果となった。

次のステップとしてよりゴールに近い、ペナルティエリア進入を対象に同様の調査を行い、ゴール期待値との相関が見られるのかどうかについて調査を行いたい。